真実の愛


【詳細】

 charokoで初の合作として『花に秘めた真実の愛シリーズ』のまとめ第2弾。

 作:charoko


 時間目安 30~40分程度


【関連作品】

パリスデージーに託した心

白い花で花占いを

想いは花とともに

誠実な恋の行方

秘めた愛の結末

秘めたの愛

 

【あらすじ】

 とある貴族のご令嬢とご子息が叶わぬと分かりながらも恋をする。

 『誠実な恋の行方』

 『秘めた愛の結末』※単編と内容が少し違います。



<誠実な恋の行方>



女性:あの日から

女性:どれくらい経ったのだろう。


女性:久しぶりに財閥のみの

女性:パーティーが催される。

女性:私は楽しみ半分、不安半分でいた。

女性:あの日、思わず花に託して

女性:想いを伝えてしまったから…



男性:あの日から

男性:どれくらいが経っただろう。


男性:偶然にも彼女から

男性:テラスの話が出た。

男性:だから外に連れ出して

男性:いつもの様に他愛無い話をした。

男性:目の前に綺麗な花があったことで

男性:自然と花の話になった。

男性:僕自身は花には詳しくなかったが

男性:彼女が花を好きなことが知れて

男性:嬉しかった。


男性:だから彼女から聞いた花の花言葉は

男性:パーティーが終わったあと

男性:すぐに調べた。

男性:彼女の想いが花言葉の通りなのか

男性:分からなかったが

男性:僕は彼女に想いを伝えると決めた。

男性:君に贈る【蓮華(れんげ)の花】の

男性:花言葉とともに。


(少し間をあける)


男性:「お久しぶりです」

女性:「そうですね」

男性:「この前のパーティーで話していた

男性:『花言葉』調べてきました」

女性:「本当にお調べになったんですね」

男性:「はい。約束しましたから」

女性:「…そうですね」

男性:「調べて思ったのですが…

男性: 僕は【スノーフレークの花】のような人、ですか?」

女性:「えぇ。私はそう思っていますよ」

男性:「なんというか…

男性: そんなことはないと、言いたくなりますね」

女性:「私が思っていることが

女性: 全てではありませんから」

男性:「確かにそうですが…

男性: 僕は嬉しかったです」

男性:「あなたにそのように思って

男性: いただけているなら」

女性:「それならよかったです」

女性:「困らせているのではないかと

女性: 思っていたので」

男性:「何故ですか?」

女性:「私もあなたも、立場があるので」

男性:「確かに…僕の家とあなたの家は

男性: ライバル関係ですからね」

女性:「私たちには関係ないと思っても

女性: 運命からは逃れられないですから」

男性:「そうかもしれません」

女性:「だからかもしれません」

男性:「というと?」

女性:「花が好きなのは裏切られることが

女性: ないからかもしれないと思って」

男性:「なるほど」

男性:「確かに、花に込められた想いは

男性: 調べなければ分からないですし」

男性:「知らなければ『綺麗』で

男性: 終わるから、期待を込めなくて

男性: いいのかもしれません」

女性:「えぇ。それに自分自身が

女性: その意味を密かに想っている

女性: なんて知られたくはないものです」

男性:「それは…申し訳ない」

女性:「責めているわけではないのです。

女性:『あの時言わずにいれば』と

女性: 後悔したことをあなたに

女性: 当たってしまったんです」

女性:「ごめんなさい」



男性:彼女が感情を出すことは珍しい。

男性:だけど、僕は嬉しかった。

男性:普段は見せない姿を

男性:僕に見せてくれる。

男性:期待してはいけないと思っていても

男性:期待してしまう。



女性:最近見た夢のせいだと思った。

女性:あの夢で見た彼は言った。

女性:『僕は、あなただから』と。

女性:あれは私の希望で

女性:彼の本心ではないはずなのに。



女性:「本当にごめんなさい」

男性:「謝らないでください」

男性:「僕のほうこそ、何も考えずに

男性: 気になったからと調べてしまって」

女性:「いえ…」

男性:「でも、僕は知れて良かったと

男性: 思っています」

女性:「えっ?」

男性:「花を見る機会は多いですが

男性: その花に意味があるというのは

男性: 知らなかったので」

女性:「なかなか知る機会は、ないでしょうから」

男性:「はい。

男性: なので、すごく楽しい時間を過ごしています」

男性:「こんなに夢中になって

男性: 何かを調べたのは久しぶりでした」

女性:「そうなのですね」

女性:「私はよく見かけた花の

女性: 花言葉を調べたりしています」

女性:「すごく落ち着くので」

男性:「落ち着く?」

女性:「えぇ。調べ物をしている時は

女性: それ以外には意識がいかないので」

男性:「なるほど。それは同感です」

男性:「夢中になっているからこそ、ですもんね」

女性:「えぇ…あ、そろそろ行きますね」

男性:「あ、待ってください」

女性:「えっ?」

男性:「これを…」

女性:「…これは」

男性:「僕が調べていた中で花言葉として

男性: あなたに贈りたいと思った花です」

女性:「【蓮華】…

女性: 珍しい花をくださるんですね」

男性:「今の僕から伝えられる想いです」

女性:「ありがとうございます」

女性:「では、また…」



男性:あなたが【蓮華】の花言葉を

男性:どのように受け取ってもいい。

男性:それが今

男性:僕に出来る精一杯の表現だ。


女性:まさか、花を頂けるなんて。

女性:それも【蓮華】なんて珍しい花を。

女性:花言葉は

女性:『あなたと一緒なら苦痛が和らぐ』

女性:『あなたは私の苦痛を和らげる』

女性:とても切ないけど、素敵な花言葉。

女性:あの人とそんな関係に

女性:なれたらと思った。


女性:今度は私がしっかり伝えよう。

女性:一番好きな花

女性:【マーガレット】に想いを託して。


(少し間をあける)


女性:彼から【蓮華】をもらってから

女性:私は彼に自分の心を伝えたいという

女性:想いが強くなっている。

女性:ダメだと、叶うことはないと

女性:分かっているのに…


男性:【蓮華】を受け取る彼女は

男性:少し困ったような、切ないような

男性:そんな表情をしていた。

男性:それでも、後悔はしていない。

男性:例え叶わないとしても

男性:伝えると決めたんだ。

男性:彼女の好きな花言葉で。


女性:あれから何度かパーティーで

女性:会ってはいたのだけれど

女性:なんだか、気恥しい感じで

女性:上手く話せない。

女性:それが凄く寂しくて…


男性:伝えてからお互い

男性:意識が変わったからなのか

男性:前より距離が出来た気がする。

男性:何度もパーティーで

男性:顔を合わせているのに

男性:埋まらない距離に

男性:切なさを感じながら

男性:僕は彼女に声を掛けた。



男性:「こんばんは」

女性:「こんばんは」

男性:「一つ提案があるのですが」

女性:「唐突ですね?」

男性:「あ、すみません…」

女性:「(微笑)いえ」

女性:「それでご提案とは何でしょう?」

男性:「敬語、やめませんか?」

女性:「えっ?」

男性:「ずっと思ってはいたのですが

男性: 同い年ですし気を遣いすぎるのも

男性: やはり疲れますから」

女性:「まぁ…そうですね」

男性:「それに、これだけの人数が居たら

男性: 誰も他の人の会話なんて

男性: 聞いてないですよ(笑)」

女性:「そうですね(笑)」

男性:「だから、やめませんか?敬語」

女性:「分かりました…とはいえ

女性: 普段から敬語で話しているので

女性: なかなか直らないかもしれませんが」

男性:「それは僕もです(笑)」

男性:「提案しておいて

男性: 言うことではないのですが

男性: 僕も普段から周りには敬語なので」

女性:「では…徐々に、で」

男性:「そうしましょう」



男性:それからは他愛ない話をした。

男性:少しずつ感覚が戻ってくるような

男性:心地よい時間が流れる。


女性:彼の提案には驚いた。

女性:でも、嬉しかった。

女性:叶わない恋ならば

女性:せめて、友人として

女性:楽しく過ごせたらと、思っていたから。


女性:しばらく他愛ない話をしていた時

女性:彼がまた、唐突に言った。



男性:「そういえば一番好きな花って何?」

女性:「本当に唐突に聞く人(苦笑)」

男性:「あ、すみません」

男性:「ずっと聞こうとは、思っていたんだけど

男性: なかなか言えなくて」

女性:「まぁ、いいけれど…」

女性:「一番好きな花は【マーガレット】」

男性:「君が僕に初めて花の話を

男性: してくれた時に言っていた花だね」

男性:「花言葉も含めて

男性: 好きなんだよね?」

女性:「えぇ」

女性:「よく覚えてますね(苦笑)」

男性:「あの時初めて花言葉というものを

男性: 知ったから、ですかね」

女性:「そうでしたね」

男性:「花言葉って

男性: 一つの花に一つじゃないのが

男性: 面白い所ですよね」

女性:「そうですね」

女性:「贈る相手に合わせて

女性: 同じ花でも意味を変えられる」

女性:「だから裏切らないって

女性: 思うのかもしれない」

男性:「そうですね」

女性:「あの時の事は

女性: 今でも少し後悔しています」

男性:「えっ?」

女性:「でもあなたが【蓮華】をくれた時

女性: 伝えて良かったと思いました」

男性:「考えが変わった?」

女性:「そう…ですね」

女性:「花言葉を含めた贈り物の素敵さを

女性: 知ることが出来ました」

男性:「確かに。素敵だ」

女性:「だから、私もあなたに」

男性:「えっ?」

女性:「今日はもう時間がないので

女性: お渡しだけになりますが」

女性:「今度お会いする時には

女性: 素敵な返答を頂けたらと思います」


男性:そう言って、彼女は僕に

男性:小さな花束をくれた。

男性:彼女の一番好きな花。

男性:【マーガレット】


男性:今度は想い違いではない。

男性:何故なら、彼女は

男性:素敵な笑顔だったから。

男性:次に会うときは

男性:この花束より大きな

男性:花束を渡そう。

男性:僕の想いを詰め込んで。




<秘めた愛の結末>



女性:(3回ドアをノックする音)

女性:「失礼致します」

女性:「お父様、お呼びでしょうか?」

女性:「えっ…?」

女性:「いえ、なんでもありません」

女性:「はい……わかりました」

女性:「失礼致します」


女性:「…これって…」


(少し間をあける)


男性:彼女から電話だと、執事から伝えられた。

男性:僕は出なかった。

男性:代わりに、執事に伝言を頼んだ。


女性:彼の家に初めて電話をした。

女性:執事が出て、

女性:「今は忙しい」とのこと。

女性:続けて、彼からの伝言で、

女性:今夜、二人で花の話をした

女性:あのテラスで待っていてほしい

女性:そう、告げられた。



男性:「…お待たせ」

女性:「………」

女性:「あ、あの…」

男性:「待って」

女性:「え…?」

男性:「これを…」


ー 男性は女性に向けて、大きな花束を差し出す ー


女性:「あ………」

女性:「…マーガレット…」


男性:「あなたの事を愛しています」


男性:「誰よりも」


男性:「何よりも」


男性:「この『誠実な恋』の花のもとに」



女性:(泣きそうに)

女性:「………」

女性:「なん、で…?」



男性:「なんでって、

男性: あなたの事が、好きだからですよ」



男性:「それに…」

男性:「先を…越されちゃったから」

女性:「え?」

男性:「花の話…でさ」

女性:「あっ…」(照れくさそうに)

男性:「あなたも、僕のことを

男性: 想ってくれてたんだなって」

女性:「そう…だね」

女性:「…伝えて良いものか、本当に

女性: 迷ったのだけれど…」

男性:「…僕も(苦笑)」

男性:「僕達の立場だと、結ばれては

男性: いけない関係だったからね」

女性:「そう…」

女性:「叶わないと…」

女性:「この想いをずっと…

女性: 心にしまっておこうかと」

男性:「僕も同じことを思ってたよ」

男性:「でも、この気持ちは、

男性:「大きくなっていく一方で」

男性:「誰にも渡したくないと」




女性:「…あなたが…夢に出てきたの」

男性:「え?僕が?」

女性:「えぇ。夢の中で

女性:『僕は、あなただから』と…」


女性:「変な事…言ってるよね」

女性:「ごめんなさい…」

男性:「そんなことないよ」


男性:「僕も、いつからか

男性: あなたを想うようになっていた」

男性:「そういう意味では、

男性: 僕は、あなただし」

男性:「あなたは、僕なんだと…」

男性:「お互いに、お互いを

男性: 想っていたんだと…」


(少し間をあける)


女性:ここには、私たち二人だけ。


女性:二人以外、誰もいないテラスで、

女性:私は、彼に言った。


女性:「星が綺麗ですね」



男性:「月も綺麗ですよ」


男性:彼女の言葉に、そう応えた。



男性:彼女は、少し驚いたような、

男性:照れくさそうな顔で、

男性:話し始めた。


女性:「……ずるい」

女性:「あなたは、いつも

女性: 素直に想いを伝えてくれる」


男性:「いつも伝えられているかな?」

男性:「これでも想い人を

男性: 目の前にして必死なんだけど」


女性:「そうかもしれないけれど」


女性:「それでも私は素直に

女性: 想いを伝えてくれてると思う」

女性:「だから、私もあなたに…」


女性:「あなたの事を…愛しています」


男性:「…」


女性:「もう、あなたは

女性: 気づいていると思うけれど…」

女性:「私は、

女性: 想いを素直に伝えることが

女性: 得意ではないの」


女性:「でも、あなたのことを想う気持ちは

女性: どうしても、言葉にしたくて」


ー 男性が女性を抱きしめる ー


女性:「あっ」


男性:「同じ気持ちだったんだね」

男性:「きっと、僕達は結ばれる運命だったんだよ」

男性:「本当に、ありがとう」

女性:「こちらこそ、あなたと同じ気持ちで嬉しい」


男性:「順番が逆になってしまって、ごめんね」




男性:そう、僕と彼女は、政略結婚をする。

男性:それをきっかけに

男性:僕らお互いの財閥は

男性:統合することになった。


男性:彼女に会えないあいだ

男性:僕は、どうしても

男性:彼女と一緒になりたくて

男性:僕は財閥が統合するように

男性:奔走(ほんそう)していたのだ。



女性:数ヵ月後、結婚式

女性:場所は、あのテラス…


男性:周りからはお互いの財閥が

男性:戦略的に、二人が

男性:結婚するように見えるだろう。


女性:実際は違う。

女性:今、私達は両想いで

女性:ここにいる。



男性:彼女がバージンロードを

男性:ゆっくりと歩いてくる。

男性:ブーケの花はもちろん

男性:マーガレット

男性:目の前で彼女が立ち止まる。



女性:「おまたせ」

男性:「とても綺麗だよ」

女性:「ふふ…ありがと」

女性:「私の為に、頑張ってくれたんだね」

男性:「そりゃあ、愛しているから」

女性:「本当に、あなたはそうやって

女性: たくさん想いを伝えてくれる」

男性:「言葉にしないと、伝わらないこともあるからね」

女性:「たしかに」

男性:「これからは、君をいつも喜ばせたいし」

男性:「君を幸せにすると誓うよ」

女性:「(ため息)もう…

女性: とても恥ずかしいんだけど」

男性:「照れてる顔もかわいいね」

女性:「でも…私も頑張るから」

男性:「えっ?」

女性:「(小さい声で)ずっと…」

男性:「…」

女性:「ずっと一緒にいてくれますか?」

男性:(照れ隠しで)

男性:「え?聞こえなかった

男性: もう一回言ってくれる?」

女性:「…意地悪…」

男性:「ごめん」

男性:「ずっと一緒にいてください」

女性:「はい」

男性:「あっ」

女性:「どうしたの?」


ー 男性、女性にキスをする ー


女性:「んっ…」


ー 女性、驚くもゆっくりと目を閉じる ー


男性:彼女が好きな気持ちが

男性:止められず

男性:思わず、彼女に口付けをした。


男性:「愛してる」

男性:「今まで言えなかった分、

男性: 言わせてほしい」

男性:「愛してる、愛してるよ」

女性:「私も愛してる」

女性:「愛してるよ」


女性:私はとても幸せを感じている。



女性:マーガレット


女性:花言葉は


女性:真実の愛



(終わり)

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