秘めた愛


【詳細】

 charokoで初の合作として『花に秘めた真実の愛シリーズ』のまとめ第1弾。

 作:charoko


 時間目安 30~40分程度


【関連作品】

パリスデージーに託した心

白い花で花占いを

想いは花とともに

誠実な恋の行方

秘めた愛の結末

真実の愛

 

【あらすじ】

 とある貴族のご令嬢とご子息が叶わぬと分かりながらも恋をする。

 『パリスデージーに託した心』『白い花で花占いを』『想いは花とともに』


<パリス・デージーに託した心>



男性:僕には密かに想っている人がいる。

男性:彼女は笑顔で身分など関係なく

男性:分け隔てなく接する。

男性:パーティーに参加すると必ずいるし

男性:歳が同じだったから

男性:自然と話す機会も多くなった。



女性:「あ、こちらに居らしたんですね」

男性:「もう話は終わったんですか?」

女性:「えぇ。話していた、というよりは…」

男性:「また、許婚(いいなずけ)になってくれって?」

女性:「はい(苦笑)

女性: 何度もお断りしているのですが」

男性:「まぁ、僕達くらいの年齢で

男性: 相手がいないのは、珍しいかもしれませんしね」

女性:「そうですね(苦笑)」

男性:「それにあなたは周りに優しいから。

男性: 押せば折れてくれると、思われているのかもしれませんよ?」

女性:「…優しいですか?」

男性:「えぇ。とても」

女性:「流石に一家の面目もありますし

女性: 適当には出来ないと思っているだけなのですが」

男性:「それでも優しいんですよ」



女性:彼はいつも私のことを

女性:『優しい』と言う。

女性:本当にそうなら良いのだけれど。


女性:私の家は、所謂(いわゆる)財閥で

女性:幼い頃から

女性:『どんな人にも愛想良く』

女性:と言われてきた。

女性:だから家の教えを守っているだけの

女性:私に彼の言葉は響かない。



女性:「褒めても何も出ないですよ?」

男性:「僕は見返りを求めて言っているわけではないので。

男性: 素直に思っていることを、お伝えしているだけです」

女性:「そうですね。

女性:(小声で)あなたはいつも…」

男性:「どうかしましたか?」

女性:「いえ。なんでもありません」


女性:私は彼が好き。

女性:でも、想いを伝えはしない。

女性:彼には想い人がいるから。

女性:それに例え両想いだとしても

女性:絶対に叶わぬ恋だと

女性:私は知っている。



男性:彼女は時折切なく笑う。

男性:その表情を見る度に

男性:支えたいと思う。

男性:何より、僕は彼女が好きだ。

男性:でも、想いを伝えはしない。

男性:彼女には想い人がいるから。


男性:僕と彼女の家は

男性:どちらも財閥でライバル関係の家。

男性:だから、例え両想いでも

男性:叶うことはないと知っている。



女性:「そういえば…」

男性:「どうしました?」

女性:「いえ。ふと、この会場のテラスは

女性: 景色が良かったなぁと、思い出しまして」

男性:「あぁ、確かに。晴れていますし、行ってみますか?」

女性:「えっ?」

男性:「疲れた時や気晴らしをしたい時は

男性: 外の景色や空気を吸うことで、楽になりますよ?」

女性:「確かに、そうですね」

男性:「だから、行きましょう?

男性: 僕も少し外に出たい気分ですし。

男性: 付き合ってください」

女性:「…わかりました」



【パーティー会場のテラス】

ー 男性がテラスのイスを引く ー



男性:「どうぞ」

女性:「ありがとうございます」

男性:「晴れていて、空気も澄んでいる。

男性: 満天の星空…いいですね」

女性:「えぇ。ここは、手入れもきちんとされていて

女性: 花も綺麗に咲いていますし」

男性:「本当ですね」

女性:「私は…パーティーのような

女性: 煌びやか(きらびやか)な場所は、苦手なのです」

男性:「僕もです。

男性: いつも財閥の家でなければ

男性: こんな思いしなくていいんじゃないかと

男性: 思ってしまいます」

女性:「あなたもそんな風に、思うのですね」

男性:「えっ?」

女性:「あなたは私に『優しい』と、言って下さるけれど

女性: 私からしたら、あなたの方が『優しい』と思うんです。

女性: いつもさり気ない気遣い、

女性: 愛想と思わせない笑顔、

女性: 柔らかい話し方…

女性: どれもあなたの相手への優しさからだと思うので」

男性:「そんな風に言われたのは…初めてです」

女性:「そうなのですか?私はいつも

女性:【スノーフレークの花】のような人だと思っていました」

男性:「スノーフレークの花?」

女性:「えぇ。花言葉があなたにぴったりだと思って」

男性:「どんな意味なんですか?」

女性:「それは秘密です」

男性:「えっ?」

女性:「心の中に留めておくほうが、良いと思うので」

男性:「なら、次に会う時までに調べておきましょう」

女性:「えっ?」

男性:「そうしたら

男性: あなたともっと色々なお話が出来そうですし」

男性:「他に好きな花や花言葉は、あるんですか?」

女性:「リナリアや

女性: 勿忘草(わすれなぐさ)は、花として好きですね」

男性:「花として…では、花言葉は、別ということですか?」

女性:「…そうですね」

男性:「花言葉も含めて、好きな花もあるんですか?」

女性:「サザンカと…マーガレットですかね」

男性:「なるほど…調べておきます」

女性:「…楽しみにしています」

男性:「そろそろ、戻りましょうか」

女性:「そうですね」



女性:きっと、彼は本当に意味を調べてくる。

女性:そして、その意味を知っても

女性:想いが通じることはない…

女性:私たちの関係は

女性:これからもこのままで。




<白い花で恋占いを>



男性:マーガレット

男性:白い花


男性:一面の花々

男性:ひとつのベンチ

男性:たたずむ女性



女性:「どうすれば、伝わるの?この想い…」


女性:そう、言いながら、

女性:花びらを一枚ずつ取っていく…


(少し間をあける)


男性:「こんばんは」

男性:「よくお会いしますね」

女性:「…ほんとに…」

男性:「座っても?」

女性:「…どうぞ…」



女性:夜

女性:晴れていて、空気も澄んでいる

女性:満点の星空

女性:浮かぶ三日月

女性:3人掛けのベンチ

女性:まんなかをあけて、二人…



男性:「ここは、落ち着きますね」

男性:「気持ちが楽になります」

女性:「確かに、そうですね」

男性:「そして、ここは、

男性: なんでも赦(ゆる)される」

女性:「……」



男性:「良いんですよ」

女性:「えっ?」

男性:「ここには、

男性: あなたの障害になるものは、何もない」

男性:「あなたを悩ませるものは何も」

男性:「ここには、僕と、あなたしかいませんから」



女性:「……ずるいです…」

男性:「えっ?」

女性:「ここには、

女性: 私とあなたしかいないのに」

女性:「それなのに…」

女性:「あなたは、ここでも

女性: なにも、言ってくれないから…」

男性:「…そんなことないですよ」

男性:「こうやって

男性: 話をしているじゃないですか」

女性:「そういうことじゃないんです」

女性:「あなたが、何を考えているのか」

女性: 何を、思っているのか

女性: 誰を、想っているのか」

女性:「私には、わからない…」

男性:「…なるほど…(苦笑)」

男性:「そう…ですね…(苦笑)」

女性:「ほら…言ってくれない…」

男性:「……」

女性:「あなたは、きっと、

女性: 私のことなんか、どうも

女性: 思っていないのでしょう?」

男性:「…そんなこと…」

女性:「あなたには、他に想っている人がいるから…」


男性:「あなたは、優しい人です…」



女性:「私は、あなたが好き…」

女性:「だけど、私は…」

女性:「あなたに、想いを伝えることが出来ない…」


女性:「でも…」


女性:「やっぱり、あなたのことが、好き…」


女性:「想いを隠すことは出来るけれど」

女性:「苦しいの…」

女性:「……とても…とても……」



男性:「…伝えたら、いいんですよ」

女性:「えっ?」

男性:「そのまま、その気持ちを伝えたらいいんです」



男性:「今の僕は、あなたなんです」


男性:「あなたの、気持ち」

男性:「あなたの、不安」

男性:「あなたの、想い」


男性:「そのすべてが、ここにあるんです」

女性:「でも…」

男性:「そうですね」

男性:「あなたは、想いを伝えるのが

男性: 得意ではないですからね」



女性:「……」

男性:「でも、大丈夫ですよ」

男性:「あなたは、優しい人です」

男性:「僕は、それを知っています」

女性:「…そうですね」

女性:「あなたは、私にいつも

女性:『優しい』と言ってくれますから」

女性:「私も、私の言葉で…」

女性:「あなたへ、想いを伝えます」



女性:「…聞いてくれますか?」


男性:「もちろん」



女性:『星が綺麗ですね』




男性:『月も綺麗ですよ』




男性:「…きっと、伝わります」


男性:「僕は、あなただから」




女性:マーガレット

女性:白い花


女性:花占いに使われる


女性:花言葉は


女性:真実の愛


女性:誠実な心 




<想いは花とともに>



男性:いつからだろう。

男性:彼女を目で追いかける様になったのは。


男性:いつからだろう。

男性:彼女の笑顔に惹かれるようになったのは。


男性:いつからだろう

男性:彼女を想うようになったのは。



女性:「あ、こちらに居らしたんですね」


女性:「よく、お会いしますね」



男性:最初は、なんとなく、

男性:他愛のない、話をしていた。

男性:僕と彼女の立場上、

男性:恋愛感情が生まれるなんてことは

男性:考えられなかった。


男性:でも…

男性:彼女は、本当に、

男性:誰に対しても、優しくて

男性:笑顔が素敵で

男性:そして、

男性:どこか、寂しげで…

男性:切なそうで…


男性:いつしか、

男性:気になるようになっていた。


男性:ただ、この想いを

男性:伝えることは出来ない…

男性:僕に言える精一杯は


男性:「あなたは、優しい人です」

男性:それだけだった。



女性:「…優しいですか?」

男性:「えぇ。とても」


男性:心から言っているはずなのに

男性:感情が追い付いていない


女性:「褒めても何も出ないですよ?」

男性:「僕は見返りを求めて

男性: 言っているわけではないので」

男性:「素直に想っていることを

男性: お伝えしているだけです」

女性:「そう、ですね…」


男性:本当に言葉と感情は比例しないと

男性:思い知らされる。



男性:僕は彼女が好きだ。


男性:でも、想いを

男性:伝えられずにいる。



男性:ある時、偶然を装って

男性:彼女を外に連れ出した。

男性:そしてまた、彼女と他愛のない話をした。


男性:今日は、花の話。

男性:僕は、花に詳しくないけれど、

男性:彼女が楽しそうにしてくれる

男性:花の話を、彼女の声を、

男性:ずっと聞いていたいし、

男性:もっと聞きたいと思った。


女性:「あなたは【スノーフレークの花】のような人だと思っていました」


女性:「【リナリア】や

女性: 【勿忘草(わすれなぐさ)】は

女性: 花として好きですね」


女性:「【サザンカ】と…

女性: 【マーガレット】が、

女性: 花言葉も含めて好きですね」


男性:彼女はその時…花言葉を

男性:その意味を…

男性:教えてはくれなかった。


女性:「花言葉の意味は秘密です」


女性:「心の中に留めておくほうが

女性: 良いと思うので」



男性:僕は、また会える口実がほしくて


男性:「なら、次に会う時までに

男性: 調べておきましょう」


(少し間をあける)


女性:花言葉


女性:スノーフレーク

女性:皆をひきつける魅力


女性:リナリア

女性:この恋に気づいて


女性:勿忘草(わすれなぐさ)

女性:私を忘れないで


女性:サザンカ

女性:永遠の愛


女性:マーガレット

女性:真実の愛



男性:次に会える口実がほしくて

男性:調べた花言葉


男性:そうか

男性:やっぱり

男性:彼女には想い人がいる。



男性:これは、僕にあてた

男性:メッセージなのかもしれない。

男性:でも…


男性:僕ではない

男性:他の誰かだとしたら…

男性:…それを、知ってしまったら

男性:僕達の関係は…


男性:それでも

男性:いや、だからこそ

男性:この想いを伝えたい

男性:例え、叶わない恋だとしても



男性:君に贈ろう

男性:蓮華(れんげ)の花を。



男性:想いは花とともに



(『真実の愛』に続く)

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