対等な関係で
【詳細】
男女サシ劇
時間目安 20~30分程度
語尾改変など、話の流れが変わらない程度の変更は可
【あらすじ】
社内恋愛をしている二人。
ちょっとしたことですれ違い…
【登場人物】
櫻井愛深(さくらいあみ):女
会社の先輩
水野蒼人(みずのあおと):男
会社の後輩
以下、本文
蒼人:「櫻井さん、資料の確認をお願いします。」
愛深:「あ、水野くん。お疲れ様。預かるね。」
蒼人:「(小声)あまり、無理しないでくださいね。」
愛深:「っ!(小声)蒼人!」
蒼人:俺と櫻井愛深(さくらいあみ)は付き合っている。所謂、社内恋愛というやつだ。
蒼人:「(微笑み)それでは、失礼します。」
愛深:「(ため息)」
愛深:水野蒼人(みずのあおと)は大学の後輩で、私の自慢の彼氏…と言いたい所だけど、周りには付き合っていることは秘密。
愛深:バレたら、お互い仕事に支障が出ると思ったから。でも、本当は…
【場面転換】
ー 愛深の部屋 ー
蒼人:「仕事結構残ってるの?俺に手伝えることがあれば手伝うよ。」
愛深:「ううん、もう少しで終わるから大丈夫。ありがとう。」
愛深:「…あ、ここで渡すのは違うって分かってるけど、預かってた資料のチェック、少し修正してあるから。」
蒼人:「…チェックありがとうございます。さ、く、ら、い、さ、ん。」
蒼人:「今日はもう帰るね。また明日。」
ー 部屋を出ていく蒼人 ー
愛深:「え?蒼人!」
愛深:「…またやってしまった。」
愛深:部屋を出ていく蒼人のことを追いかけることも出来ないまま、1人ぽつりと呟く
ー 蒼人、愛深の部屋を出た帰り道 ー
蒼人:「…また、やっちゃった。」
蒼人:愛深は、『ここで渡すのは違うって分かってるけど』ってわざわざ言ってくれていたのに…子供だ、俺は…
【場面転換】
ー 翌朝、会社 ー
愛深:結局、あの後謝ることも出来ずに、自己嫌悪で泣いて、気付いたら朝だった…。
愛深:きっと、今度こそ蒼人に嫌われた。
愛深:「…(小声)お昼、誘えるかなぁ。」
蒼人:「…おはよう、ございます。」
愛深:「あ、おはよう…水野くん。」
愛深:やっぱり、目を合わせてもらえなかった…。
蒼人:くそ…なんか気まずいな…まぁ俺が悪いんだけど…。このままじゃダメだ…なんとかしないと。
蒼人:俺は愛深さんにスマホでメッセージを送った。
蒼人:「昨日はごめん。」
愛深:あ、蒼人からメッセージ…
愛深:「こっちこそ、ごめんね。」
愛深:「…お昼、一緒に食べてくれる?」
愛深:…ちゃんと謝りたいって素直に言えたらいいのに。
蒼人:「昼は外に出てるから、夜でもいい?」
愛深:「わかった。」
愛深:「外出、気をつけてね。」
蒼人:「ありがとう。」
愛深:「終わったら、連絡ちょうだい。」
蒼人:「わかった。」
蒼人:(ため息)どんな顔で愛深さんに会えばいいんだろう…
愛深:夜…会ってくれるだけでも良しとしないと。
愛深:まずは、ちゃんと仕事をさっさと片付けよう。
【場面転換】
ー 夜 ー
蒼人:「お待たせ。ごめん、遅くなって。」
愛深:「お疲れ様。私も今終わったところだから、大丈夫。」
蒼人:「…あの、さ。」
愛深:「ん?」
蒼人:「ごめん。」
愛深:「蒼人は悪くないよ。」
愛深:「私が仕事を持ち込んだからいけないの。ほんとにごめんね。」
蒼人:「…愛深さんは、俺と一緒に居て楽しい?」
愛深:「楽しいし、ずっと一緒に居たいって思うよ。」
愛深:「蒼人は…私といて辛くない?」
蒼人:「…」
蒼人:「ズルいよ…その聞き方。」
愛深:「ごめん…なさい。」
蒼人:「愛深さんにごめんて言われたら、何も言えないよ。」
蒼人:「…愛深さんの事、好きだよ。だけど、不安なんだ。…自分が愛深さんに何も出来ていないんじゃないかって。」
蒼人:「あの時から、ずっと好きだし、その気持ちは変わらないよ。でも、愛深さんがどう思っているか分からなくて。」
蒼人:「そもそも、釣り合ってないんじゃないかって思っちゃうんだ。」
愛深:「…私だって、ずっと不安だよ。年も離れているし、蒼人が心変わりしたらどうしようって。」
愛深:「好きな気持ちをちゃんと伝えることも出来ないし、離れられても当然だって思ってるけど、そんなの嫌だとも思ってて…う~ん、なんて言ってたらいいのかなぁ。」
蒼人:「心変わりなんてしないよ。俺は愛深さんが好きだ。」
蒼人:「愛深さんは、俺の事、好き?」
愛深:「大好きだよ。蒼人が思っているよりずっと。」
愛深:「だから、こんなに悩んでるし、不安に思ってるんだよ。」
蒼人:「愛深さん…」
ー 愛深を抱きしめる蒼人 ー
蒼人:「ごめんね…ありがとう。」
蒼人:好きって言ってくれたのに…なんでこんなに不安なんだろう。あの時から、僕の気持ちは変わらないのに…
【場面転換】
ー 二人の出会い ー
愛深:「えっと…君がうちの部署の新人の子かな?」
蒼人:「はい。水野蒼人(みずのあおと)です。よろしくお願いします。」
愛深:「よかった…私は櫻井愛深(さくらいあみ)。今日から君の教育担当になります。よろしくね。」
蒼人:第一印象は、とても元気な人だと思った。誰に対しても明るくて、丁寧で、親切で。
蒼人:でも、どこか相手に対して線を引いているような気がした。
蒼人:初めて会った時から、気になっていた。
【場面転換】
ー ある日の夜 ー
蒼人:「櫻井さん。まだ、帰らないんですか?」
愛深:「っ!…水野君。」
愛深:「もう少しやってから帰ろうかと思って…」
蒼人:「え…?櫻井さん…?涙、出てますけど…」
蒼人:「大丈夫ですか?」
愛深:「…大丈夫。」
愛深:後輩に心配かけるなんて…何やってるんだろう、私。
蒼人:「ごはん、行きません?美味しいお店見つけたんですよ。」
愛深:「うん、いいよ。どんなお店?」
蒼人:「Felice(フェリーチェ)っていう名前のイタリアンバルなんですけど、何食べても美味しいんですよ」
蒼人:「何があったかは分かりませんけど、美味しいもの、お腹いっぱい食べたらきっと元気になりますよ」
愛深:「…イタリアンか、いいね。」
愛深:「ありがとう(微笑み)」
蒼人:「あっ…え、と。」
蒼人:「そ、それじゃ、行きましょ」
蒼人:初めて、その人の本当の笑顔を見たと思った。
【場面転換】
ー お店 ー
愛深:「素敵なお店だね」
愛深:「こういう所、よく来るの?」
蒼人:「ありがとうございます。」
蒼人:「あー…笑わないで聞いてくださいね。」
蒼人:「失敗した時とか、落ち込んだ時に、お店に食べに行くんです。入社してから何回行った事か(苦笑)」
愛深:「ふふっ。可愛いところあるんだね」
蒼人:「櫻井さんは、落ち込んだ時の解消法ってあったりしますか?」
愛深:「う~ん。私は…お散歩かな。」
愛深:「目的地とか決めずにボーっと景色を眺めながら、歩いて気持ちの整理をすることが多いかも。」
蒼人:「散歩って良いですよね。」
蒼人:「何も考えないでいることも出来るし、考えて気持ちの整理をすることも出来るので。」
愛深:「そうだね。」
愛深:「あ、でも最近はお気に入りの場所が出来たの」
蒼人:「お気に入りの場所?それはいいですね!それってどこなんですか?あ、櫻井さんだけの秘密の場所、とか?笑」
愛深:「秘密ってわけじゃないけど…行ってみる?」
蒼人:「え、いいんですか?」
愛深:「いいよ。ここからも近いし」
蒼人:「わぁ、楽しみです」
愛深:「じゃあ、食事が終わったら行こうか。」
愛深:「(小声)元々行こうと思ってたし」
蒼人:「ん?なんか言いました?」
愛深:「ううん、なんでもない」
愛深:「あ、秘密ってわけじゃないけど…みんなには内緒ね?」
愛深:「みんなの前では、かっこいい先輩でいたいから(イタズラっぽく笑う)」
蒼人:「秘密、ですか?了解です(笑)」
愛深:「そう、2人だけの秘密」
蒼人:「秘密の関係って、なんか良いですね(笑)」
蒼人:二人で食事をしながら、他愛ない話をした。いつも活発な印象の彼女。でも、今日はなんだか元気がなかった。
ー ご飯を食べ終えて ー
愛深:「さて…移動しようか。」
愛深:「あまり遅くなっても良くないしね。」
蒼人:「はい。」
ー お店を出る ー
【場面転換】
ー 店の外 ー
愛深:「この坂の上の展望台なんだけど…」
愛深:「水野くん、暗いとこ大丈夫?」
蒼人:「大丈夫です。展望台なんてあったんですね。知りませんでした。」
愛深:「ならよかった。」
愛深:「私もこの間見つけるまで知らなかった(苦笑)」
【場面転換】
ー 展望台にて ー
蒼人:「わぁ、綺麗ですね!」
愛深:「でしょ?街灯が少ない分、夜景が綺麗で、人も全然来ないから考え事したり、ボーっとするのにちょうど良くて」
蒼人:「そうですね、これはずっと見ていられます」
愛深:「うん…こういう所だと、人に見られないから…弱さが出しやすいなぁって最近思うんだよね」
蒼人:「あの…泣いてた理由、聞いてもいいですか?」
蒼人:「話したら楽になる事もありますし。」
愛深:「…大したことじゃないよ。ただ、彼と別れただけ。」
愛深:「仕事を優先してたから、呆れられたっていう、よくある話だよ。」
蒼人:「今は、無理して何でもないような態度、とらなくていいと思いますよ。」
蒼人:「…大したことありますよ。悲しいから泣いてたんですよね?」
愛深:「…水野くんは優しいね。」
愛深:「そうだね…悲しかったんだと思う。理解してくれてなかったのが…」
蒼人:「理解って難しいですよね。理解したいとは思いますけど。」
蒼人:「あと俺、優しくないですよ?」
蒼人:「半分は、いつもお世話になってる先輩が、元気になって欲しいなって。」
蒼人:「…もう半分は打算です(笑)」
愛深:「私は優しいと思うよ。」
愛深:「先輩を元気付けようなんて、なかなか思わないと思うし。」
愛深:「というか、水野くん。打算なんてあるんだ(苦笑)」
蒼人:「櫻井さんは、いつも元気で、明るくて、かっこよくて、憧れなんです。」
蒼人:「でも、それだけじゃなくて…」
蒼人:「好きなんです、櫻井さんの事。だから、好きな人に男として見てもらいたいっていう、打算です(苦笑)」
愛深:「え…?」
愛深:「水野くんが、私を?」
蒼人:「…まぁ、気付かないですよね」
愛深:「だって…水野くん、モテるじゃない。社内の女の子たちから水野くんのこと好きでってよく相談されてたし」
愛深:「最近はされなくなったから、誰かと付き合ったんだと思って…」
蒼人:「あぁ、それならお断りしましたよ。好きな人がいるんでって。」
愛深:「そもそも、歳が離れてるし…こんな、仕事ばかりな人を好きになるなんて、思わないし。」
蒼人:「好きな事に歳は関係ないですよ。それに僕は仕事の時の櫻井さんしか知りません。それでも好きなんです。もっと、色んな櫻井さんを知りたいです。」
愛深:「…。」
ー 愛深、自然と涙が流れる ー
蒼人:「…って、こんなこと急に言われても困りますよね…すみません。」
愛深:「え…?あ、違うの」
愛深:「そんなこと言われたこと無かったから、その、嬉しくて…」
ー 蒼人、愛深をそっと抱きしめる ー
蒼人:「…」
蒼人:「今は別れたばかりで気持ちの整理がつかないかもしれませんけど、落ち着いたら、僕の事、見てくださいね。」
【場面転換】
ー 現在 ー
愛深:「あの時も、こうして抱きしめてくれてたね。」
蒼人:「何度だって抱きしめるよ。愛深さんの事、好きだから。」
愛深:「うん、ありがとう。」
愛深:「ほんと、あの時から成長してないなぁ、私(苦笑)」
ー 愛深、抱きしめられながら、涙を流す ー
蒼人:「俺も、成長してないよ。むしろ退化してるかも(苦笑)」
蒼人:「あの時、歳が離れてても関係ないって言ったけど…心のどこかで気にしてたのかもしれない。」
蒼人:「愛深さんに甘えてた。ごめん。」
蒼人:「これからお互い対等な関係を築けるように努力する。」
愛深:「うん。私も頑張る…」
愛深:「蒼人の傍にこれからも居たいから。」
蒼人:「ありがとう。お互い頑張ろうね。…愛深。」
愛深:「っ!」
愛深:「…やっと、呼んでくれた(小声)」
蒼人:「頑張るって決めたからね。」
愛深:「うん…凄く嬉しい(照笑)」
蒼人:っ…!(愛深の笑顔に心を奪われる。)
蒼人:(無言)
蒼人:「(悪戯っぽく)えー?…それだけ?愛深はどう頑張ってくれるのかなー?」
愛深:「…。」
愛深:「(意を決したように)蒼人、ちょっと後ろ向いて。」
蒼人:「え?うん…。」
愛深:「ありがとう」
ー 愛深、深呼吸して、そっと抱きつく ー
愛深:「いつもちゃんと言えないし、今もこれが精一杯だけど…」
愛深:「これからはもう少し伝えられるように頑張るから…」
愛深:「蒼人、大好き」
蒼人:「…っ!」
蒼人:「…ありがとう」
蒼人:「俺も…大好きだよ」
(終わり)
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